北海道大学寮歌

■柔道部員の愛する寮歌

 柔道部員は、折りにふれ、柔道部東征歌や寮歌などを歌う。試合に勝てば凱歌として、負ければ涙とともに、新しい出会いに酒を汲み交わし歌い、別れに肩を組み歌う。今でも恵迪寮で毎年作られ、その数は100曲を超える。柔道部員に愛唱されている代表的な寮歌の一部を以下に紹介しよう。恵迪寮生らには神聖視しすらされてきた「都ぞ弥生」は、旧制一高(現在の東大教養部の前身)の「嗚呼玉杯に」、旧制三高(同じく京大教養部の前身)の「紅萌ゆる」とともに、日本3大寮歌のひとつに数えられるほど有名な寮歌である。かつて、ある評論家が、「都ぞ弥生」と他旧制高校の寮歌との間の決定的な違いを指摘したことがある。他高校の寮歌の歌詞には、その根底にある種エリート主義的な、他を排する心根の歌詞が少なからずあったが、「都ぞ弥生」だけは、ただ北海道の雄大な自然を謳い上げている、と。確かにそうである。歌詞を吟じてみてほしい。眼前に初夏の薄緑や郭公の声、冬の吹雪の風や春の雪解けのせせらぎまで聞こえてきそうだ。北大には、全国の進学校から北の地に憧れた豪傑が集う。彼らは地元旧帝大や都会の洒落た大学に行くことをあえて避け、青春時代を北大で送ることを自らの意志で選ぶのである。その北の地で、魂を歌いあげたのが、北大の寮歌である。

■ストームの歌

醒めよ迷いの夢さめよ 醒めよ迷いの夢さめよ 醒めよ迷いの夢さめよ
醒めよ迷いの夢さめよ……

1 札幌農学校は蝦夷ケ島 熊が棲む 荒野に建てたる大校舎 コチャ
  エルムの樹影で真理解く コチャエ コチャエ
2 札幌農学校は蝦夷ケ島 手稲山 夕焼け小焼けのするところ コチャ
  牧草片敷き詩集読む コチャエ コチャエ
3 札幌農学校は蝦夷ケ島 クラーク氏 ビーアンビシャスボーイズと コチャ 
  学府の基を残し行く コチャエ コチャエ

■都ぞ弥生(明治45年度寮歌) 作歌:横山芳介君  作曲:赤木顕次君

(前口上) 吾等が三年を契る絢爛のその饗宴はげに過ぎ易し。然れども見ずや穹北に瞬く星斗永久に曇りなく、雲とまがふ万朶の桜花久遠に萎えざるを。寮友よ徒らに明日の運命を嘆かんよりは 楡林に篝火を焚きて、去りては再び帰らざる若き日の感激を謳歌はん。

1 都ぞ弥生の雲紫に 花の香漂ふ宴遊のむしろ 尽きせぬ奢に濃き紅や
  その春暮れては移らふ色の 夢こそ一時青き繁みに 燃えなん我胸想いを載せて
  星影さやかに光れる北を 人の世の 清き国ぞとあこがれぬ
2 豊かに稔れる石狩の野に 雁遥遥沈みてゆけば 羊群声なく牧舎に帰り
  手稲の嶺黄昏こめぬ 雄々しくそびゆる楡の梢 打ち振る野分きに破壊の葉音の
  さやめく甍に久遠の光り おごそかに 北極星を仰ぐ哉
3 寒月懸かれる針葉樹林 そりの音凍りて物皆寒く 野もせに乱るる清白の雪
  沈黙の暁ひひとして舞う ああそのそう風飄々として 荒ぶる吹雪の逆巻くを見よ
  ああそのそうくう梢つらねて 樹氷咲く 壮麗の地をここに見よ
4 牧場の若草陽炎燃えて 森には桂の新緑萌し 雲ゆく雲雀に延齢草の
  真白の花影さゆらぎて立つ 今こそ溢れぬ清和の陽光
  小河のほとりをさまよひゆけば うつくしからずや咲く水芭蕉 春の日の
  この北の国幸多し
5 朝雲流れて金色に照り 平原果てなき東の際 連なる山脈玲瓏として
  今しも輝く紫紺の雪に 自然の芸術を懐かしみつつ 高鳴る血潮のほとばしりもて
  貴とき野心の訓へ培い 栄え行く 我等が寮を誇らずや

■柔道部東征歌  作歌:河合九州男先輩(S4卒)  作曲:小峰三千男先輩(S14卒)

1 蓬風吼ゆる北海の 岸辺に狂う波の花 雲煙遠く流れ入る 石狩河岸に根城して
  桜花の旗ひるがえし 立てる我が部ぞ力あり
2 桜花咲く日の国の 猛き心の益荒男が おのこさびする高潮に 不断の力養いて
  究め尽せし先人の 教えぞ励め柔の道
3 号笛一声高鳴りて 集い来りし豼豺軍 熱砂吹き捲く夏の日も
  鈴の音凍る冬の夜も 瘡痍に悩みし肉よ 思えばここに幾年ぞ
4 今東海に雲湧きて 雷鼓とどろき風すさぶ 覇者の偉業を果たさんと
  蛟竜一度鉾とれば あわれ声なき影もなき かの狂乱の牛羊ら
5 輪影高く空澄みて 朔風膚を裂く夕べ 楡樹の下に円居して 祝う首途の若武者よ
  交す栄ある酒盃に 月下の誓なさんかな
  MIDI 制作者 照本 昂之(H20入)

■水産放浪歌
(前口上) 富貴名門の女性に恋するを純情の恋と誰が言うぞ。暗鬼紅灯の巷に彷徨う女性に恋するを不情の恋と誰が言うぞ。雨降らば雨降るもよし風吹かば風吹くもよし 月下の酒場にて媚を売る女性にも純情可憐なる者あれ。女の膝枕にて一夜の快楽を共に過ごさずんば 人生夢もなければ恋もなし。響く雷鳴 握る舵輪 睨むコンパス六分儀 吾ら海行く鴎鳥 さらば歌わん哉 吾らが水産放浪歌

1 心猛くも鬼神ならず 男と生まれて情はあれど 母を見捨てて浪越えてゆく
  友よ兄等よ何時また会わん
2 朝日夕日をデッキに浴びて 続く海原一筋道を 大和男子が心に秘めて
  行くや万里の荒波越えて
3 浪の彼方の南氷洋は 男多恨の身の捨てどころ 胸に秘めたる大願あれど
  行きて帰らじ望みは持たじ

■春雨に濡る(大正12年度寮歌)  作歌:高橋北雄君

1 春雨に濡るアカシア花 街路の灯はなやかに 地は銀鼠にたそがるる
  寂かに歩む若人が 心にめざむ爽かの 麗み充てる力かな
2 夏の入陽に砂丘の 猟虎の骨に鴎飛ぶ 融けざる銀の山脈は 碧薄れゆく空にうく
  名残の光身にあびて 異郷の方を思うかな
3 仄青白き白樺や 落葉ふむ音寂しくも 谷また谷を辿り行く 今宵は淡き夢見んと
  焚火を囲み歌う寮歌 紫紺の闇に解けて行く
4 青き空透き銀の月 石狩の河波光る 雪の野限は靄こめて 灯漂ふアイヌ小屋
  琥珀の酒を汲み交し 王者の誇り偲ぶかな

■瓔珞みがく(大正9年桜星会歌)  作歌:佐藤一雄君

1 瓔珞みがく石狩の 源遠く訪ひくれば 原始の森は闇くして 雪解の泉玉と湧く
2 浜茄子紅き磯辺にも 鈴蘭薫る谷間にも 愛奴の姿薄れゆく 蝦夷の昔を懐ふかな
3 今円山の桜花 歴史は旧りて四十年 吾が学び舎の先人が 建てし功はいや栄ゆ
4 その絢爛の花霞 憧憬れ集う四百の 健児が希望深ければ 北斗に強き黙示あり
5 醜雲消えて人の夜に 陽光はうららかに輝けど 風の名残のつきやらで
  狂瀾さわぐ今し今
6 潮に暮るる西の空 月も凍らむシベリアの 吾が皇軍を思ひては
  猛けき心の躍らずや
7 白銀狂うふ埋もれ路も 踏みて拓かむわが前途 はろけき牧場に嘯けば
  雲影はやし草の波
8 想を秘めし若人が 唇かたくほほえみつ 仰げば高く聳え立つ 羊蹄山に雪潔し

■草は萌え出で(昭和53年第70回記念祭歌)  作歌:朝倉仁樹君

1 草は萌え出で郭公は鳴き 憧れ睦ぶ宿舎に 疾風怒濤の渦の中
  明り求めて放浪いぬ 巷の塵をふり払い 悠々迪(みち)を歩まなん
2 蛮声放歌乱舞する 姿雄々しき吾なれど 原始林の可憐な白花に
  心ふるわす春もあり 清き乙女子去りて行く 恋に涙す秋もあり
3 気高き野心の男の児等が 士幌に山小屋をうち建てぬ 十勝の山と平原に抱かれ
  果てなく魂翔けるなり 厳しき北の大地より 新たな夢に飛びたたん
4 読み飲み語り夜は明け 熱き情に年は経り ああ青春の祭日も
  はや七十を数うなり 寮生よ再び楡影に 三十年に集わなん

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