極私的観戦記 平成23年 第60回札幌大会
           小菅正夫(昭和44年入学)
2日目
 一夜明けて、北大陣営も落ち着きを取り戻したようだ。気迫充実準決勝に臨む。対するは久々に準決勝へと勝ち上がってきた大阪大学である。阪大は、本岡主将ら4年生6名、3年生2名、2年生4名そして1年生5名の総勢17名での参戦である。
 今大会、選手登録20名を満たしているのは、北大・東北大・九大の3校のみで、東大19名、名大18名、京大・阪大が17名と部員不足が深刻な状況にある。各大学は、部員確保に連携して当たって貰いたいものである。

 準決勝 対大阪大学戦
 5年待った阪大との対戦
 大阪大学との対戦は、2006年第55回大阪大会の敗者復活戦であった。突然、試合当日になって重要選手の1人であるエリックの出場が禁止された。北大陣は激しく動揺し、畑中主将は立て直す暇もなく戦いへ突入せざるを得なかった。緒戦名古屋に敗れ、続く敗者復活戦で相見えたのが大阪大学であった。思い出す度に涙が出ている、苦しくそして悲しい敗戦であった。あれから、時は流れて5年の歳月が過ぎた。
 阪大は、本岡主将以下の意気込み強く、京大との一回戦では、本岡主将が2人を抜いた他に3人の選手が1人ずつ抜いている。チームとして実力を養成してきた証である。阪大は五将以下に抜き役小林大、下田を配し副将には本岡主将が詰めて、置き大将を残そうとの作戦だ。
 一方、我が北大陣は、序盤は若手中心で組み、中盤を輝本、真井、保坂が固め、終盤は赤松で締め、最後に平尾、根元を控えさせる作戦。選手たちは静かに闘争心を練り上げていた(図C-1)。そして、その時が来た。会場には両校の対戦が告げられた。
 「赤、大阪大学、白、北海道大学」両軍は畳に上がり礼を交わす(図C-2 )。
図C-1
図C-2
 先鋒は、3年目小竹初段対2年生蘆原初段の対戦。蘆原組む間もなくへたり込み、小竹は背帯を取って、右手を腹に回し、ヤッとばかり捻り上げ横転させじっくりと胸を合わせる体勢を築く。蘆原二重絡みで我慢。小竹右膝を立て二重絡みを外しながら左腕を巻き、準備万端で足を抜いた、その瞬間、蘆原懸命に体を回しカメへ戻る。小竹、頭に廻り腋を取りながらグイと捻れば、蘆原堪らず天井を仰ぐ。小竹胸を合わせて崩れ上に極め(図C-3)、横四方へと移行、極まったかと思われたが、何と軟体動物のように蘆原の下半身だけが下を向き、胸が合っていたにも関わらず審判は「解けた」と判定。“一度抑え込みが宣告された後、胸が合わさっている間は、抑え込みは継続している”と考えるのが普通だが・・・。いずれにしても、小坂が立ち上がりもう一度やり直し。またしても蘆原のへたり込み。ここで、再三のへたり込みに対して注意が与えられた。
組み際の大外巻き込みを躱され、後ろに付かれた小坂が、片足を掴まれたまま後ろを向いて離そうとしたが、蘆原にしがみつかれたところで、時間。取りこぼしの一戦であった。
図C-3
 次鋒には、3年目宮島初段が登場。176cmと上背のある宮島に対する1年生添田は168cmと小柄ながら弐段の実力者。宮島、直ぐに引き込むが持ち上げられて、待て。宮島、添田の横帯を取り、上手く左に回り込みながら引き込み、右手で襟を引き付け理想的な引き込み。右で添田の左腋を掬い、返さんと引き上げるが添田両手を突っ張っり、一度下がって足を越えて来た瞬間、宮島の長い足が三角に捉えたが、添田懸命に持ち上げて、待て。1年生ながら、なかなか力強い。再開後も宮島、うまく引き込み添田を制する。添田が腰を浮かした瞬間、宮島が左足で膝を蹴って引き落とし、上に付いて体を伸ばし、腰を極めて絞めを狙う。宮島、足を肩に上げて絞め上げる(図C-4)が、何と添田は体を丸めて首を抜きにきた。絞まっていたのにもったいない。宮島、直ぐに引き込むが、添田胸を張って対抗し時間。
図C-4
 参鋒には2年目小坂初段が4年生栃澤初段と対戦。小坂、大きく奥襟を取ると栃澤、するりと引き込む。小坂両足を抱え込むが栃澤の足が利いている。小坂、捌こうとするが栃澤の引き付け強く、なかなか足を越えられない(図C-5)。小坂が腰を落とした時、栃澤が反動つけて上がってきて足絡みのようになりお互いに膠着してしまう。「このままでは栃澤の思うとおりになってしまうぞ。小坂ぁ、振り解けぇ」声援むなしく、そのまま時間。
図C-5
 四鋒には、期待の1年目清野弐段が陣取り、同じく1年生錦織初段を迎える。両者右の相四つ。錦織が襟を取った瞬間、清野叩きつけるように奥襟を取って内股を仕掛けるが、上手く躱され、両者畳に落ち、分かれる。すぐに奥襟を取った清野、今度は慎重に内股で飛ばし、技有り。そのまま袈裟に固めて、合わせ技で一本勝ち(図C-6)。
図C-6
 清野の2人目は、4年生渋谷初段。渋谷、組んで直ぐに引き込む。清野、振り解こうと背中を見えて跳ねるが、渋谷足にしがみついて清野を引きずり込む。清野左足を抱えられてしまっており、抜け出すことができない(図C-7)。一度、持ち上げそうになるが渋谷も頑張り、危うく背中に付かれそうになる。清野、振り解いて足を越えた体勢に戻すが、左手を殺され又しても膠着。清野隙を見て立ち退き、待て。奥襟を取りに行くが、引き込まれそうになり、腰を上げた途端に追われて背中に付かれるが、上手く落として立ち上がる。清野、試合巧者渋谷に勝負をさせて貰えず引き分け。
図C-7
 五鋒は4年目大瀬初段、対するは2年生山田初段。大瀬、右足に飛びつく。山田後ろに回り、大瀬を伸ばそうとするが大瀬崩れず。山田諦めて立ち上がり、待て。再開後も、大瀬右足を取り、山田背中に張り付いて腰を極めようとするが、大瀬伸びず。またしても諦めて立つ。大瀬、今度は飛行機投げで左足を狙いつつカメと沈む。離れようとする山田の袖を引き絞り大瀬の体勢に持ち込む(図C-8)。山田、首を起こして仰向けにしようとするが、大瀬は返らない。大瀬、終始一貫自己主張を崩さず、山田を制して引き分けを取る。
図C-8
 六鋒4年目河野初段に対するは、1年生ながら京大戦で1人を抜いている山下弐段。両者80kgと似た体型。河野左、山下右の喧嘩四つ。河野の大内浅く場外。山下も大内を返すが浅い。山下の左一本背負いに対して河野は右一本背負い(図C-9)と、両者同じような技を出し合う。後半は山下の手数がやや勝り、阪大の稽古量を感じさせたが、お互いに決定技が出ず、引き分け。   
図C-9
 七鋒には、4年目水産主将輝本弐段が登場し、1年生竹之内初段と対戦。輝本、中央で引き込む。竹之内胸を張り正対す。輝本右袖を絞って引き込もうとするが、竹之内に立ち上がられる。輝本、何とか引き込もうと飛行機投げまで繰り出すが178cmと長身の竹之内、懐が深く、場外。輝本が攻め倦ねている。「輝本ぉ、あと三つ」北大陣より気合いが投ぜられる。輝本、襟から腕を取り、帯を掴んで引き込み、ようやく体勢を作るが、竹之内難なく立ち上がる。どうも見かけによらず力強いのかもしれない。輝本がやりにくそうだ。苛ついた輝本、脇固めに回るが、体を預けられ時間ばかりが過ぎていく。「輝本ぉ、後45だぁ」何か変だ。輝本に取れないような相手には見えないのだが。輝本、引き込んで逆十字を狙い、腰を引いた竹之内に覆い被さり一瞬縦四方に入ったかに見えた(図C-10)が、首を抜かれて、時間。何とも悔しい6分間であった。
図C-10
 中堅に陣取るは、安定感抜群の4年目真井初段、阪大4年生柴田初段を迎える。真井、いつも通りの引き込み。阪大陣より「柴田、立て立て」という指示で、柴田立ち上がる。真井の寝技が警戒されている。真井の引き込みに柴田捌いてきて真井をカメにするが、真井自分から仰向けになり、二重絡みから胴絡みへと移行し安定する。ここで柴田立ち上がって、待て。真井、柴田の足を取り転がして上になって噛み付くが、攻めきれず自ら下になり正対す。そのまま両袖を絞り足を利かせるが、芝田に立たれて待て。今度は柴田が引き込んできた。予想外の展開に真井の居心地が悪く自ら下になるが、直ぐに捌かれ背中に付かれる。柴田の股裂きに体を捻られるが懸命に下を向き畳にしがみつく。柴田諦めて立つ。またしても柴田が引き込む。真井足を越えて、首を極めに行くが、時間(図C-11)。
図C-11
 戦いは中堅まで来て、北大が清野の1勝で優勢に進める。
 ここで、勝差を広げるべく、七将には主将保坂弐段が布陣し、2年生上野無段を迎える(図C-12)。上野の引き込みに保坂、大きく跨り、頭に廻った時には、左手が上野の左肘を捉えてた。保坂、上野に馬乗りとなり左肘を取って捻れば、上野参りを打って一本(図C-13)。
図C-12
図C-13
 保坂の2人目は、京大戦で1人を抜いている4年生小林大初段。小林の引き込みに合わせて保坂が被さって行けば、小林堪らず俯せとなり、カメとなる。保坂前に回り脇をこじ開けようとするが、堅い。保坂、三角に回すが、小林自ら回って離れ、待て。小林引き込み、保坂正対。保坂捌けば小林すぐに俯せとなりカメ。保坂、ゆっくりとした攻撃。首を引き起こして返すが、小林懸命に絶える。保坂、腹に乗せて送り襟を狙う(図C-14)も、小林保坂の手を掴み必死の頑張りを見せる。保坂脇を上げ縦四方への移行を見せるが、小林素早く保坂の腕を引き落とし、逃れて立つ。保坂、渾身の大内も遠く、しゃがみ込まれる。保坂、背中について締めを狙うが、小林の頑張りに遭って時間。
図C-14
 六将4年目竹中初段、対する下田初段は、1年生ながら体重115kgを誇る巨漢で京大戦では1人を抜いている。65kgの竹中は何と体重差50kgとの戦いとなる。竹中、下がりながら引き込んで逆十字。下田に持ち上げられて待て。下田が引き上げるタイミングで、竹中両足の踵を引き付け、体を入れ替えて背に付くが、下田竹中を背負いながらも平然と立つ。竹中、足を利かせて下田を浮かせたが下田の重量で揚がらず。「後2つと45」の声。阪大陣から「腰を落として胸を張れ、大丈夫だ」と下田に声援が飛ぶ。下田返されるのが怖いのだろう、体を寄せても来ない。竹中、機を見て下田の右足を折り背中に回り込みんで馬乗りとなり、右腕を取った瞬間持ち上げられて(図C-15)待て。阪大陣から歓声とともに「正面についていなければダメだ」と厳しい指導が飛ぶ。竹中引き込んで、両足で巴に上げようとするが、両足を浮かせただけで元に戻る。竹中、左足に下田の右肘を捉え体を左に振って逆を取るが、下田巨体を回転させてブリッジで堪え半回転して竹中の上に乗り、足抜きに掛かる。だが、やはり1年生、上半身を固めずに足を抜いても極められるはずもない。阪大陣より「首から首からぁ」の声に慌てて首を抱え、縦四方に向かうが竹中落ち着いて足を絡め、時間。竹中、落ち着いた試合運びで下田を一蹴したものの、体重差とは実に厳しいものであることを実感した。 
図C-15
 五将4年目高橋弐段に対するは、阪大同じく4年生小山初段。小山、高橋の両手を絞って組ませず。両者場外へ流れて、待て。組み際、高橋の内股もうまく躱される(図C-16)。高橋、小山の前捌きに戸惑う。「あと3つ」の声を聞き、高橋も気合いを入れるが、不用意に場外へでたところを咎められ注意を受ける。相変わらず小山の前捌き良く高橋がいなされ続ける。高橋奥襟がとれない。ようやく襟をとれても直ぐに場外へ逃げてられ、小山にも場外注意。場外際で内股を放ち倒れたところ後ろに付かれ、左腋で巻き込むが 、小山しぶとく堪える。さらに右腋でも巻き込むがついてこない。小山に上手く背中に付かれ時間を使われたまま、それまで。高橋、小山の術中に嵌り、引き分け。
図C-16
 四将の2年目鈴木初段は、副将に陣取った阪大主将本岡弐段を迎えることになった。ここは鈴木の正念場である。何としても本岡を止めるのだ。
 本岡、175cm・75kgとすらりとした長身で手足長く、だらりと下げたまま、ゆら〜っと鈴木に近づいてくる。左袖を引っかけられ、奥襟を取られそうになり振り解こうとしたところへ大内が飛んできた。鈴木、うまく躱して場外へ。本岡、首を前に落としてヌゥーッと手を伸ばしてくる。なんとなく不気味。鈴木、背帯を取られ腰を引いて頭を下げる。「だめだぁ〜鈴木ぃ、頭が下がってるぞぉ〜。しっかりと釣り手を絞って胸を張れぇ」と大きな声援が飛ぶ。何と、右足を左手で掬われ持ち上げられるが、鈴木辛うじて水平を保ち腹から落ちて、何もなし。本岡が寝技を諦めて立とうとするところを鈴木右足にしがみつく。本岡立ったまま引き離そうとするが、動きが止まり、審判は試合を止めて、立たせる。
 本岡、横捨て身で鈴木を横転させ、背中につくが、自分から離れて立つ。本岡奥襟を取る。鈴木左手で横腹を突っ張り、懸命の防御。本岡、大内に刈り込むが鈴木半回転して腹から倒れ場外。本岡長い足で大外を繰り出す。引き付け強く、徐々に鈴木との距離が狭まってきた。「鈴木ぃ、動き負けるなぁ」。鈴木、右袖を絞って付いて行かず、それでいい。左足を払われ、あれほどしっかりと握っていた右袖を離してしまった。その瞬間、本岡が大きく背中を取り、鈴木を引き付ける。「鈴木ぃ、頭を上げろぉ、胸を張れぇ」北大陣より必死の声援。鈴木の足が揃ったところを本岡の長い右足で大きく払われ、鈴木の胸が本岡の腰にまで引き寄せられた。一度後ろへ下り反動をつけて右足で大きく払われる。ついに、鈴木の腹が右足に乗せられてしまい、回転して背中から落ちた(図C-17)。
図C-17
 しかし、北大は参将に、絶対安全5年目赤松初段を控えさせていた。赤松、落ち着いて睨み合う。本岡、大きく奥襟を取りに来るが、赤松屈み込む。再開後、本岡が組んでくるが赤松引き倒され足を取りに行くが、待て。本岡に一気に押しつぶされるが、赤松足を取ってしがみつきにじり寄るところ三角に絡まれるも、耐えて噛み付くが逃げられる(図C-18)。本岡の鋭い動きに赤松屈み込む。本岡の大内、鋭く空振り。赤松振り上げた足を取りに行き、指導を受ける。赤松引き込むが、引きつけが不十分で逃げられる。赤松、引き込んで胴絡みを狙うも持ち上がれて、待て。赤松、背帯を持たれたまま足にしがみつくが逃げられる。赤松組み際の大内を堪え、自ら引き込んで胴絡み。振り解いた本岡、大外から、大内、内股と繰り出すが、赤松は重い。最後のラッシュを赤松落ち着いて捌ききり、時間。赤松、本岡を止めて堂々の帰陣。
図C-18
 副将の4年目平尾弐段、大将2年生森本無段を畳に誘う。組んで直ぐ、脇を取り縦に返して、そのまま右で肩を固め、腕を巻いて、絡まれている右足を引き抜き抑え込み。横四方から上四方に変化して、森本を討ち取り(図C-19)、試合終了。
図C-19
 北大、大将根元不戦で阪大を下し、5年前の雪辱を遂げる(図C-20)。
図C-20
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