極私的観戦記 平成23年 第60回札幌大会
           小菅正夫(昭和44年入学)

二戦目 対九州大学
 厳戦の末
 九大とは昨年1回戦で対戦しており、記録的な勝利を上げているものの、勝負は時の運。心して当たらねばならぬ。まして、九大の2試合を観戦していて、選手の動きが良く稽古量も十分と見た。九大は1日3試合目となるが、全員が十分に体を動かし汗を流しているため、かえって体の切れは良いと考えられる。
 一方の北大は、緒戦7人を残しての勝利で、意気は上がっているものの、選手の半分はこの試合が初戦となるのがやや心配である。もちろんそのことは北大陣は十分に意識しているので、試合前のウォーミングアップには特に念を入れていた(図B-1)。
図B-1
 対戦する両校の名が告げられ、いよいよ試合開始である(図B-2)
 北大先鋒には4年目副主将根元弐段が陣取り、一番槍を狙う。根元は、180cm・90kgという体格を活かし、寝技・立ち技とも保坂に次ぐ実力者で、七帝戦ではすでに2勝を挙げている。そして、3月に開催された京大寝技錬成会での大活躍で誰もが知る存在となった。そのことは本人も自覚しており、大きな自信となっている。対する九大は、1年生井手初段。1年生ながら176cm・81kgという恵まれた体格を活かし、京大戦では1人を抜いて分けるという実績を示している。
 根元右、井手左の喧嘩四つ、根元立ち上がり早々大きく奥襟を取り、背帯を引き付けてカメにする。根元、背中について左足を腹から股に差し込み、一気に右へ回転させ、慌てて左に潜ろうとする井手に胸を合わせ、右腕を掬い肩を極めて横四方の体勢へ、左足を預けたまま右腕を縛り、基本通りに左膝を立ててから二重絡みを外し、足をするりと抜けば横四方が完成して一本(図B-3)。
図B-2
図B-3


 二人目は、3年生武内初段を迎える。武内左の喧嘩四つ。172cm・89kgの武内、果敢に内股を仕掛けてくるところ、根元がっしりと潰してカメにする。背中について右へ回し、送り襟を狙いつつ左で腋を掠い、片羽から縦四方への移行を狙っている模様。さすがに武内も、それを察知したようで、腋を固めて頑張る。根元、方針転換し右を肩に回して極め、横四方の体勢へ移行。武内、我慢できずに鉄砲で返そうと体を捻るも、根元待ってましたとばかり胸を合わせようとするが、丸い武内最後まで体を捻りきり畳を見る。根元、頭に取り付くが武内、猛然と立ち上がる。根元、足を掛けて潰し直すが、武内の膂力、侮れず。
 根元、もう一度やり直し、片羽から縦四方を狙いながら、暴れる武内を横四方に包み込む。まったく同じ展開で、我慢しきれず鉄砲に来るところを今度は上手く胸が合わせ、上四方に固めて抑え込む(図B-4)。誰もが根元の2人抜きを確信した。その10秒後、信じられないことに、武内が体を捻って抑えから逃げ出して根元の上に付いた。九大陣から雄叫びが沸き上がる。北大陣、唖然として声もなし。どうした、根元。うかつにも武内の右足に腕をかけてしまい、武内にそのまま回転され地獄に取り付かれながらも、ブリッジで絞めを防ぐ(図B-5)。北大から悲鳴が漏れる!その瞬間。「うぉ〜〜ぉ」という雄叫びと共に、根元腕を極められたまま武内を担いで跪き、肩車で武内を落として立ち上がった。まさに根元、鬼の如しである。両軍から驚きの歓声とため息が溢れた。休む間もなく、根元が背に付き、横に回して何としても抑えようと腕をねじ込む。武内、何という体力気力。自ら回転して正対し、飛ぶように足を越えた。その瞬間、6分の試合時間を告げる笛が鳴った。お互いに、一瞬といえども動きが止まることなく攻防に終始した名勝負。あと2分あれば勝負は決していただろう。副将・大将戦で戦わせてみたい顔合わせであった。
図B-4
図B-5
 北大次鋒は、4年目副主将河野初段が九大参鋒2年生田中弐段と対戦。田中は161cm・67kgと小柄ではあるが、名大と京大の両森田選手を抜いてきた実力者。動き回られれば煩い相手である。河野左、田中右の喧嘩四つ。開始早々、激しく動き回る田中を組み止めるため上から潰そうとするが、田中頭を持ち上げ、腕を振り解く。素早く力強い動きだ。河野、十分に組めぬまま、前へ前へと圧力を掛け続ける。田中はただただ、河野の左手を取って引き摺るように動き回るだけ。河野、ようやく左手が襟に届き、一本背負いを見せるが田中を捉えること能わず場外。田中、いつも場外際で動き回り、直ぐに場外へと逃げてしまうので、河野の時間が取れない。主審は場外の度に、待てを掛けるが、これでは七帝戦の良さが失われてしまう。立ち技もできる限り継続させるべきだ。
 再開後、河野中央で一本背負いを掛け(図B-6)、そのまま寝技に誘うも、田中嫌って立つ。そのまま、時間が来て引き分け。河野にとっては、苛立ちの募る試合展開であったろう。だが、それが七帝戦なのだから、それでも尚かつ取るための稽古が必要なのだ。
図B-6
 北大参鋒は2年目小田弐段、対する九大は四鋒3年生藤堂初段。小田173cm・60kgに藤堂170ck・68kgと両者似たような体格で、小田左藤堂右の喧嘩四つ。小田が組み負け、呷られて跪きカメとなる。藤堂、背帯と襟を持ち、踵を腋に入れようとするが、小田上手く跳ね上げて立つ。再開後は、小田も落ち着き自分の組み手を主張するが、技が出ない。小田、またしても呷られ、跪くところを覆い被されてカメ。藤堂の横三角は荒く、返される心配はない。途中で立ち上がれそうになったが、やはり潰されてしまいカメ。横三角を狙われるが、はね返し(図B-7)、縺れて時間。小田にとっては悔しい引き分けであったと思う。小田には、来年までに課題が見えた一戦であった。先ずは力負けしないことだ。
図B-7
 北大四鋒には、五年目赤松初段が陣取る。172ck・90kgの赤松はこの一年間、四年目と同じ稽古量を積んで体重をキープしてきている。それは、勝つためだ。結果を出すために、全てを犠牲にして精進を重ねてきた。対する井崎初段は、177cm・77kgと均整の取れた体格の四年生で、1回戦の名大戦で強豪杉山と分けている堅実な選手である。
 両者右の相四つ。井関、伸び上がるように大きく奥襟を取り、小内から大内へと連続攻撃。対して赤松が足取りに行ったところを、上から潰されカメとなる。井崎、赤松を横にして送り襟を狙う。赤松、振り解こうと大きく藻掻くが、井崎離れずしぶとい(図B-8)。赤松、何度も立ち上がろうとするが井崎に絡み付かれて為し得ず。結局5分近くも井関を背負ったままの悔しい引き分けに終わる。
図B-8
 北大五鋒は4年目真井初段。真井は160cm・70kgと北大一の小兵である。これまで立ち技に固執する傾向にあったが、この一年の稽古で、寝技で抑えられない自信と後ろについての絞めを習得して初陣を迎えた。対する九大六鋒は1年生鹿倉弐段。173cm・91kgの体格で真井を圧倒している。
 真井、落ち着いてゆっくりと礼をし、開始を待つ。組んでみると流石にでかい。真井、スルリと引き込むが逃げられる。真井、寝技に誘うが鹿倉ついて来ず。真井、鹿倉の大外に合わせて上手く引き込むが、鹿倉場外まで跳んで逃げる。真井の度重なる引き込みに諦めたのか鹿倉膝をついて正対。でも、持ち上げられて、待て。引き込む真井を場外へ引きずり出すが、これは「自ら場外へ出る」行為なので、場外注意にならないのだろうか。それでも審判は、「待て」で分けることなく、そのまま場内へ戻したのは、正しい判断だ。しかし、真井が鹿倉の道衣を持って自由を奪っているにも拘わらず、主審が「待て」を宣言した。再開後、二度にわたり、真井が上着を掴まずに寝技に持ち込もうとしたことで、注意を受けた。次はしっかりと道衣を持って引き込む(図B-9)が、持ち上げられて、待て。同じことを3度繰り返して、それまで。真井、寝技に終始しての引き分けは1年間の精進の賜。立ち技で勝負したくなる思いをよく耐えた。自らの役割を自覚することが己を強くする。
図B-9

 【閑話休題】
 昭和44年入学の筆者等にとって、七帝ルールとは、“完全専守が認められており、それが最大の特徴である”と認識していた。その結果、出場選手に抜き役と分け役といった役割分担があった。選手は、自らの判断で抜き役を目指す者もあり、一方「どんな抜き役とも分ける」という難題を自らに課して4年間を励む者もいた。抜き役と分け役は、七帝柔道に向かう「自身の型」でもあるのだ。もちろん、その選択は、誰に指示されるわけではなく自らの意志で選択するものでなければならないことは、言を待たない。
 分けに徹した戦いを、“闘争心がない”と見る者もあるが、それは間違いである。分け役は、闘争心の固まりとなって抜き役の攻撃に身を曝しているのだ。だからこそ、守りのスペシャリストとして、それぞれが独特の型を開発してきた。カメや二重絡みの他、名称がつけられていない様々な特技を身につけて試合へと臨んでくる。この勇気は讃えられて然るべきものである。

 北大六鋒は3年目173cm・81kgの小竹初段。対する九大は七鋒に布陣した副主将坂巻弐段。177cm・100kgの巨躯を活かして名大早稲田を袖釣り込み腰に葬り、京大戦では星野を下している。次期主将の小竹にとっても北大陣にとっても正念場の戦いとなる。
 小竹左、坂巻右の喧嘩四つ。両者襟を取り合い、引き手を狙う(図B-10)。坂巻の振り回す小外掛けに小竹思わず膝をつくも、すぐに立ち上がるが、坂巻の重い体重を浴びせられてカメになる。坂巻が股から袴を持って、一気に持ち上げ、襟を持って抱え上げるが、小竹バランス良くその都度カメへ戻る。坂巻じれて勢いよく襟を持って後ろに返るが、その瞬間を待っていた小竹、機敏に動いて形勢逆転。さあ攻撃開始だ。と思った途端、それまで。小竹、副主将を相手に、落ち着いて引き分ける。もう少し小竹の攻撃も見たかったが、時間故致し方なし。小竹、危なげのない引き分けであった。
図B-10
 七鋒に陣するは、2年目鈴木初段。鈴木は、この一年、怪我が多く稽古不足は否めないが、初陣に向けてしっかりと調整してきた。171cm・83kgの体格を活かした試合を期待したい。対する九大中堅は、同じ2年生の長島初段。体格も171cm・85kgとほぼ同じ。
 鈴木、両袖を絞り長島の立ち技を防ぐ。鈴木、徹頭徹尾両袖を絞り上げ、長島の動きを制す。長島、嫌って場外へ出て、待て。再開後、長島大きく奥襟を取って引き付けようとするが、鈴木左手を腰に当てて安定。長島、小内大外と続けて仕掛けてくる。
 「鈴木ぃ、頭を上げて吊り手を下げろぉ。胸を張れぇ。」矢継ぎ早に北大陣営より声援が飛ぶ。長島、組み手を放して、再度の組み際に大外を仕掛ける作戦。「鈴木ぃ、動き負けるなぁ。場外際に注意しろぉ。」声援を受けて、鈴木は両袖を絞る体勢を取るが振り解かれ、組み際に大きく奥襟を取られ、頭を下げた瞬間、長島の大外が鈴木を回した。鈴木辛うじて先に回転し腹から落ちて場外(図B-11)。九大陣から、技有りのアピールがあったが、これは何もなし。再開後は鈴木、落ち着いて両袖を絞り込み、それまで。
図B-11
 北大中堅は4年目177cm・90kgの大瀬。対する九大は2年生175cm・73kgの三谷弐段。大瀬、迷わず左足に飛びつき、自己主張のカメに沈む。三谷、馬乗りになって襟を持って後ろへ返そうと仰け反るが大瀬半回転して、元のカメ。突然の鼻出血に試合を中断、顧問医師山田先輩の出番である。
 再開後三谷、横に崩して回そうとするが、大瀬は断固意志を貫徹して畳を噛み続ける。大瀬の鼻出血が止まらず、動きを止めて治療。畳が真っ赤に染まっている。三谷も血を拭き取っている。激烈な戦いだ。再開後、三谷が大瀬を離れて立とうとした瞬間、大瀬は右足に跳びつき懐に抱き込む(図B-12)。甘さに気付いた三谷、もう一度腹で潰してSRTを狙うが、大瀬にSRTは全く無効。三谷諦めて、馬乗りとなり襟を持っての返しを狙うが効果無く、それまで。大瀬、三谷を完全に黙殺しての引き分け。自己主張を貫く。
 前半戦を終えて、北大が1点リードの展開である。これまで出場した8人の内、7人が今大会の初戦であり、やはり九大の方が体が動いている印象を受けた。後半は東大戦を戦った選手が出場してくるので、もう少し差が開いてくるだろう。
図B-12
 北大七将には3年目宮島が布陣、4年生池田初段を迎える。宮島、中央でサラリと引き込み池田も応ず。池田、しっかりと正対してから、左足を越えてくる。宮島引き付けて正対へ戻すと、今度は左足を越えてくる。宮島足を利かせて正対へと戻す。安定した試合運びだ。池田、胸を張り腰を落として、圧力を掛け足を越えようと狙うが、宮島の足が邪魔をして入れない。宮島、機を見て前三角に絞めようとするが(図B-13)、惜しくも浅い。池田が嫌うところを、素早く横に崩して体側に付けば、池田堪らずカメで守る。宮島、馬乗りとなってそのまま抱きついて池田を腹に乗せ送り襟を狙う。宮島の左腕が池田に押さえられ、どうしても腋に腕が入らず、そのまま時間。宮島には、下からの返しばかりではなく上になってからの攻撃が必要だ。是非とも次の1年間を攻撃に力点を置いた稽古に励んで貰いたい。そして、来年の福岡でその成果を見せて欲しい。
図B-13
 北大六将には、1年目清野弐段を起用。175cm・90kgの大型新人の初陣である。対する九大は2年生強豪川波初段。181cm・90kgの巨漢は高校時代修猷館のツインタワーとして恐れられていた。昨年の名古屋大会では1年生ながら、阪大戦で2人抜き、名大戦も2人を抜いてみせた剛の者である。
 両者気合い十分に畳にあがった。開始早々、川波は叩きつけるように奥襟を取りに来たが、清野臆することなく払い除けて、大きく背帯を取り、大内を見舞う。さすが川波、崩れそうになりながらも横捨て身に落とすが、清野堪える。川波、両手で背帯を取り、むりやり引き倒そうと全体重を掛けるが、清野背を屈めることなく堪える。清野、川波に奥襟を引き付けられるが、左腕を腋に突っ張り胸を張る。力ずくの一戦に会場が飲み込まれていく。服装を直して再開。奥襟を引き付けられ、清野が窮屈な組み手を強いられている。「清野ぉ〜組み負けるなぁ〜」。北大から声援が飛ぶ。川波、軽く内股のけん制。ケンケン数歩。川波の強力が清野を包み込む。「清野ぉ〜。ファイトォ〜〜」必死の声援。清野、強烈に引き付けられる。川波は落ち着いている。大内で場外に出そうになると、場内へ連れ戻してきた。清野完全に制御され、数度内股で牽制された後、強烈な大内に襲われるも、辛うじて振り解く。ここは、頑張りどころだ。「頭を下げるなぁ。胸を張れぇ」。大内から大外と川波の猛攻が続く。
 “何とぉ、川波が左で背帯を取り、引き込んできたぁ〜”(図B-14)。北大陣、唖然とす。清野、引きつけを拒み、力で立ち上がる。「負けるなぁ〜清野ぉ〜」必死の声援が届く。4分過ぎ、川波の内股が深く入り、ケンケンで浮かせた後、一度大内へ切り返し、引き続く内股で清野を完全に腰から跳ね上げた(図B-15)。清野畳に叩きつけられ一本負け。
図B-14
図B-15
 清野の初陣は苦い結果となった。ただ、清野にとっては、良い経験となったであろう。中盤以降、どうやって川波の猛攻を凌げば良かったのか。自問して貰いたい。来年までには、その答えを出し、九州の地で我々に結果を見せて欲しい。借りは返せ。頼むぞ、清野。
 北大陣は、清野の後詰めに4年目高橋を配していた。まるで川波の配置を読んでいたかの如く。高橋の左組をものともせず、川波が背中を取って引き付ける。高橋、機を見て払い腰を仕掛けるが、のし掛かられて潰される。川波、横に付いてのフライパン返し。“そんな、なめんなよ”と思った瞬間、95kgの高橋が高々と吊り上げられ背中から落とされた。信じられない恐るべき怪力だ。高橋、すぐに回転して畳を見る。川波、再度フライパン返しを狙うが、高橋横に付かせず左足を手繰って押していく。川波、ズバッと左足を抜き、横に付こうとするが高橋は体を回して阻止す。川波、足を絡めてついに体側に付きフライパン返しの体勢、高橋体を浮かせて潜り込もうとして、左足に左腕で絡みついた。その瞬間、何と川波が左腕を足で巻き、高橋の右腕を取って地獄の体勢へ。両腕を取られた高橋は、左手で自分の帯を握って関節を防ぎ、命を懸けて畳に密着。川波、諦めて関節狙いに方針転換。高橋は自由になった右腕一本で川波を跳ね除け元の体勢に戻す。“よぉ〜〜し”。北大陣より歓声が上がる。川波、攻撃の手を休めず、一気に横に付けば、高橋も体を捻って阻止。川波横に崩して、背中に付き絞めを狙う(図B-16)が、それまで。攻めも攻めたり、守るも守ったり。見応えのある一戦であった。
 五将戦を終えて、1対1の同点となる。
図B-16
 四将戦。北大4年目竹中初段対九大3年生箱田初段。竹中は、173cm・65kgと小柄ながら、俊敏性を活かした跳び十字には定評がある。彼が柔道部に入部した動機は、元来の格闘技お宅に加え、浪人中に増田先輩(昭和61年入学)が執筆する「秘伝」との出会いであった。秘伝を熟読した彼は、北大柔道部への入部を決意し、北大へと進学した。
竹中、初陣にも関わらず、落ち着いて五十畳の真ん中で引き込み、しっかりと引き付けて返しを狙う。箱田、両腕を竹中の腹帯で突っ張り、正対姿勢を保つ。まったく上がってこない箱田を何とか引っ張り上げ、後ろに崩そうとするが、攻撃の糸口をつかめず時間が経過していく。竹中、ようやく横に崩して、上になるが、暴れられて立つ。服装を直して再開。竹中、引き摺るように引き込み、上手く返してカメにし、横三角狙いから左腋を取り、一瞬のうちに右腕を絡めて回し、横四方へ。箱田必死のブリッジで耐える(図B-17)。抑え込みが宣告されるが、無念にも解ける。「竹中ぁ〜、取るんだぁ〜」。声援を受け竹中の猛攻が続く。竹中、足で右腕を取り、回転して逆十字を狙うも立ち上がられる。竹中、そのまま引き込むが、残念ながらそれまで。竹中、初陣ながら、竹中の柔道を十分に展開できていた。4年間の精進の賜だ。
図B-17
 参将戦。北大保坂主将と対するは、九大2年生尾崎初段。開始早々、保坂出足払いで膝をつき頭に廻られて腋を取られるが、下から捲り上げすぐに上になる。尾崎の胴絡みを立ち上がって圧力を加えながら待つと、辛抱しきれず尾崎が足を外してきた。保坂が下腹で腰を押して尾崎をエビにしながら横に回り込めば、尾崎堪らず俯せとなる。保坂、足を尾崎の下に差し込み、襟と背帯を取って引き上げるが、尾崎懸命に後へずり下がろうとして右手を伸ばした瞬間、保坂の左足は確実にその腕を捉えていた。保坂、前に回転しようとするが尾崎懸命に耐える。保坂は右手で襟を探るが、尾崎固く目的を達し得ない。保坂、抑えに変更し、そのまま抑え込みが宣せられる(図B-18)。しかし、尾崎懸命の回転が保坂を巻き込み8秒で「解けた」。腕を絡んでいた分、動きが同調し易かったのかもしれない。保坂、今度は頭に付きSRTを狙うが尾崎回らずやり直しで正対。保坂、跳ね上げて右腕を取り、逆十字から前三角へ移行するも尾崎立ち上がり、待て。保坂、大内から引き込んだところで、残念無念、笛が鳴って、それまで。保坂が分けられた。ここは、尾崎の頑張りを評価すべきだろう。
図B-18
 副将戦。北大4年目水産主将輝本弐段対九大主将宮崎弐段。宮崎は、165cm・72kgと小柄ながら、力強い柔道に徹し、名大では1人を抜いている。輝本、この大勝負は、取らねばならんぞ。輝本引き込むが、掬われてカメ。宮崎頭について、肘と背帯を取り崩そうとするが、輝本腋を開けず、じっとカメを維持。宮崎の猛攻をただただ耐える輝本だが、前後左右と先々に手を打っており、闘争心の固まりとなっている。一瞬立ち上がるが(図B-19)、上から押さえつけられカメへ逆戻り。終盤、腋を取られそうになるが冷静に掻き出して、安定を保つ。輝本、常に機先を制しての防御に徹していたが、不意に後ろに押されて、仰向けになってしまい宮崎にのし掛かられ胸が合わせられそうになる。「輝本ぉ〜、あと1ぉつぅ。ファイトォ」声援が飛び交う。輝本、右足を絡めとり、左足を抱えて安全姿勢を取り、そのまま時間。ついに大将決戦となる。
図B-19
 北大大将4年目平尾弐段、対する九大は3年生木村初段。勝負を決する大将戦を迎え、両軍威儀を正して正座する中、両者試合場中央仕切り線の前へ出て、礼。開始早々、木村が引き込み平尾が、北大伝統の噛み付きで勝負だ。平尾、定跡通り木村の右足を越え、左手を襟から肩に進め、がっしりと極める。右足は二重絡みを避けるため膝を立てて踵を尻に着けている。教科書のような噛み付きだ。十分に肩が決まったところで右腕を木村の左腕に差し込み、上体を上へずらしながら右足を抜けば完璧なる横四方が完成し、抑え込み(図B-20)。木村、最後の最後まで暴れきるも30秒が経過し一本。
図B-20
 北大は、大将決戦で九大を下し、準決勝へと駒を進めた(図B-21)。それにしても、九大の充実振りは見事である。次回福岡大会ではさらに戦力を充実し、優勝候補の一校に数えられるであろう。願わくば両校が決勝戦で当たることを願う。
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